積層する時間 〜本堂工事の現場から〜

積層する時間 〜本堂工事の現場から〜

過去の確認、未来への歩み。

2008年にはじまった「平成の大修理」も終盤を迎え、2017年春にはついに本堂の本格的な改修がはじまりました。建造から数百年になる文化財が今もその姿をとどめて建っているのは、数えきれないほどの人の尽力によって支えられてきたからこそ。そして今、清水寺は、数百年後の未来に向けた文化財保護に取り組んでいます。

50年ぶりに葺き替えられる本堂の屋根(2017年時)
従来の彩色を残す奥の院の柱

次の400年に向けて

風雨により朽ちた本堂の檜皮葺屋根

今回の修理事業では、9棟の国宝・重要文化財の保存修理がおこなわれています。これまでに「馬駐」「本坊北総門」「子安塔」「朝倉堂」「轟門」「阿弥陀堂」「奥の院」の修理を終え、2019年春現在、あとは本堂と釈迦堂を残すのみとなっています。現在の堂塔はほとんどが寛永6年(1629)の大火災で焼失した後に再建されたもの。つまり、約400年前の建物が定期的に修理されて現在の姿があるのです。急峻な崖に建つ本堂をはじめとする貴重な建築を未来に残すため、日々多くの技師や職人の皆さんによる作業がおこなわれています。
約50年ぶりとなる本堂の檜皮葺(ひわだぶき)屋根の葺き替え工事では、江戸時代の記録に残る長さの檜皮(ひわだ)を主に使用します。現在、通常使われている檜皮よりも長いもので、屋根を本来の姿に戻すとともに耐久性を高めることにもつながります。本堂屋根の面積は2,050㎡。大量かつ、特殊な檜皮を用いるため材料の確保には8年前から取り組んできました。これからも建物を風雨から守り続けるための大切な作業です。

本堂、屋根の葺き替え工事の現場(2017年時)